滋賀県博物館協議会平成28年度第2回研修事業簡易報告

□事業名講演会「知と汗と涙の近大流コミュニケーション戦略」
□講師世耕石弘氏(学校法人近畿大学広報部長)
□日時平成29年1月19日(木) 14:00~16:00
□会場大津市歴史博物館
□参加者30名

従来の大学広報の常識を覆す独創的な取り組みで、三年連続志願者数日本一を達成した
近畿大学(近大)。なかでも「マグロ大学」の斬新なキャッチコピーに象徴される、大学
の魅力を最大限に引き出す積極的なメディア戦略は、大学だけでなく行政や経済界など幅
広い業界から注目されています。講演会の講師は、広報部長としてその陣頭に立つ世耕氏。
マンモス校のジレンマと向き合い、如何に大学広報の改革に取り組み、ブランド力と知名
度の向上をはかられてきたのか。現場での貴重な経験を交えながらお話し戴きました。

「入れ替えのないリーグ戦」のように固定概念化している大学の序列。そうした現状の
ブランドや価値観の壁を打破すべく、近大では大学の常識に挑む斬新な広報活動を展開さ
れています。ウェブを活用したネット出願やアマゾンでの教科書販売、また一部で配本拒
否されたというファッション誌風の大学案内の発行など。学内外からの批判もあったよう
ですが、それに臆さない強い意志と時局に即した柔軟な発想の大切さを痛感しました。
当初は13学部・在籍数約32,000人の近大で、何をPRしてゆくかが大きな課題であった
ようです。建学理念の実学主義を体現する研究で、他校と差別化がはかれるコンテンツと
して白羽の矢が立ったのが養殖マグロ。とくに養殖マグロを提供する店舗の開業は、最も
注目を集めた事例です。また、方向性を変え話題性のある企画を打つことの重要性を、「日
本一度派手な入学式」や吉本興業との包括連携協定の事例を挙げて紹介くださいました。

近大の広報は驚くべきことにすべて自前。限られた予算を効率的に活かすため広告代理
店は使わず、ソーシャル・ネットワーキング・サービスを積極的に導入されているようで
す。イベントや研究に関する情報は、ツイッターやユーチューブで発信され、常に効果測
定をされていますが、時には斬新な内容に炎上することも…。しかし、「〈伝えた〉でな
く〈伝わる〉こと」が大切で、それもある程度は見越した活動だと世耕氏は仰います。
スマートフォンの普及により、情報が瞬く間に拡散されてゆく昨今。現代は、情報が新
しい価値観を創出してゆく時代の大きな転換期を迎えています。近大の広報とその成功の
秘訣は、そうした時流をいち早くキャッチし、真面目に楽しいことを追求して、誰かに話
したいと思う面白い話題を提供してゆくことにあるようです。「伝わらなくては意味がな
い」とユーモラスに持論を熱弁される姿を通して、そのことが実感できた講演会でした。

 

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