「滋賀県が生んだ60cm反射望遠鏡のある天文台」

ダイニックアストロパーク天究館は1987年、ダイニック株式会社が教育・文化事業の一環として、多賀町の工場に隣接する広大な敷地に県内最大の60㌢反射望遠鏡を備えた公開天文台として開館しました。以来、次の時代を担う子供たちが星空の美しさ、宇宙の神秘を知ることのお手伝いになればと、天体観測や天文普及のために活動しています。
2019年に、プラネタリウムを設置し、臨場感を持って満天の星空を楽しんでいただけるようになりました。プラネタリウムはデジタル投影方式で、現在の星空の投影はもちろんのこと、地球上のあらゆる場所での星空シュミレーション、また地球を飛び出して宇宙空間へ、太陽系や宇宙の果てまでの飛行体験も可能です。

当館の望遠鏡の中で最大の60㌢反射望遠鏡の主鏡は、望遠鏡レンズ研磨で現代の名工として名高い野洲市の苗村敬夫氏の手によるものです。国内外の公共施設や個人の要望に応じ2000面もの望遠鏡レンズ・反射鏡を製作してこられました。近年はコンピュータ制御の研磨装置に移行し、職人の経験や目に頼るレンズ研磨は少なくなっていますが、手作業によるわずかな誤差の修正を行った望遠鏡のレンズは、見るものに感銘を与えてくれる名品と言えます。苗村氏はレンズ和尚として有名な野洲市錦織寺の故木辺成麿氏に学生のころから師事され、日本天文学の発展や普及に努めてこられました。

望遠鏡本体は、当時京都に拠点があった西村製作所によるものです。近代天文学の初めから大学や研究所の望遠鏡、観測装置からドームの製作まで行い、日本の大型望遠鏡製作では随一のメーカーとして発展しました。現在は大津市に拠点を移し、国内設置最大の3.8㍍反射望遠鏡や、昨年チリのアンデス山系に開設された世界最高所(標高5640㍍)にある天文台に6.5㍍の巨大な反射望遠鏡も製作・設置されています。
望遠鏡架台の設計は、6.5㍍望遠鏡設計にも携わった故西村有二氏。当時の60㌢望遠鏡は同社としても大型であり、各所に西村氏の野心的な創意、工夫が盛り込まれた装置です。
ガラス製の主鏡は精密な鏡面形状を維持するために厚みが10㌢もあります。重さは70キログラムほどあり、鏡の重さによる変形が起こります。1?㍍も許されない変形を少なくするための特殊機構も、この大きさとしては初めて取り入れられ、その後の大型望遠鏡の基礎となっています。
この望遠鏡はこれまでに小惑星「多賀」の発見に始まり、国内初の月面衝突発光観測、ガンマ線バースト現象の観測などに使用され、その功績により日本天文学会より表彰を受けています。
近々3度目の大きな整備を予定しています。鏡の再メッキをすると再び輝きがよみがえり、星の輝きも増して惑星表面もはっきり見えるようになります。また見学者の方に理解しやすいよう、デジタル機器を使った観察装置を設置して、同時にモニターを使った観察も予定しています。
ダイニックアストロパーク天究館 杉江淳

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