A. タイトル:「文化財保護行政の不易と流行―「改正」文化財保護法下を生き延びろ!-附 歴史資料の保存と活用の現在」
講師:地主智彦(文化庁文化財第一課歴史資料部門・選定保存技術部門文化財調査官)
B. 日時:令和元年10月30日(木) 13:30〜16:00
C. 会場:大津市歴史博物館
D. 参加者:45名
E. 概要
平成31年(2019年)4月1日から、改正された文化財保護法が施行されています。この改正は、文化財をまちづくりに生かし、その保存・活用を地域一帯で取り組むことを柱としたもので、文化財の活用に舵を切る大きな改正となります。
これによって、さまざまな民間団体との協力を得ることで、所有者の高齢化やコミュニティの変化により維持管理が困難になっている文化財の劣化や散逸防止などが期待できる一方で、文化財の観光利用が進み保存に支障が出るのではないかとの懸念もあります。
今回の情報交換会は、文化庁より講師の地主氏を招いて改正の趣旨や内容の共通理解をはかるとともに、改正後の制度の活用についての課題や留意点などの情報交換の機会とすることを目的に開催されました。
講演では、最初に文化財保護行政史概観のお話があり、文化財保護法成立の歴史と特色について詳しく解説していただきました。その後、文化財保護法改正に至る経緯のなかで、文化財の観光資源化への期待と国全体の政策の流れを詳しくご説明いただきました。これらの話によって、改正までの全体の流れが良く分かるとともに、今回の改正で何が問題であるのかについても理解を深めることができました。
文化財を観光資源化しようという国の大きな流れの中で、博物館職員は改正された文化財保護法の内容や考え方を十分に理解して、主体性をもって博物館の理念に沿って本来やるべき業務を遂行していくことがますます重要になってくると思いました。
(滋賀県立琵琶湖博物館 総括学芸員 八尋克郎)