令和3年度 滋賀県博物館協議会 情報交換会

「展示・収蔵環境における有害物質対策」報告
A.タイトル:「展示・収蔵環境における有害物質対策」
B.講師:吉田直人氏(独立行政法人国立文化財機構 文化財活用センター)
     髙木叙子氏(滋賀県立安土城考古博物館)
     福井智英氏(長浜市長浜城歴史博物館)
C.日時:令和3年11月2日(火) 13:30~16:20
D.会場:滋賀県立安土城考古博物館2F セミナールーム
E.参加者:28名
F.概要

 滋賀県博物館協議会・研修委員会が主催する情報交換会は、コロナ禍の余波を受け、2年振りの実施となりました。まず、研修委員会の皆さんをはじめ、関係者の皆さまのご尽力に感謝申し上げます。
 情報交換会はリモートによる講演を交えるという、初めての試みとなりました。テーマは、多くの博物館が問題を抱える、展示ケース及び収蔵庫内の有害物質発生の問題を取り上げるもので、その問題意識、対策方法の共有の時間となりました。
 まず、吉田直人氏の講演では、空気環境問題とその対策について、主にエアタイト展示ケースにおける有機酸、アンモニア等の有害物質の蓄積という、多くの館が抱える問題の共有より始まりました。事前に、各加盟館にアンケートを実施し、その内容に対する回答を含みながら、実践的な対策方法について分かりやすい説明を受けました。
 続く、髙木叙子氏、福井智英氏の各報告では、各所属館における、有害物質対策の実施状況について説明がありました。近年、経年による既存の博物館の改修を実施する館も多く、改修、を機に実施した空気環境調査で判明した有害物質問題に対する2館の奮闘ぶりは、他の加盟館にとっても他人事ではなく実感できるものであり、参考となる内容が多く含まれていました。また、最後の質疑応答では、他の加盟館が抱える問題について、自館の状況と照らし合わせながら熟考することとなり、その後、会場となった安土城考古博物館の企画展示室を見学し、現場に即した議論を交わす有意義な時間となりました。
 文化財を展示するにあたっては、温湿度や有害物質への対策が必須であり、各加盟館はそれに対する努力を日々続けています。それでも発生してしまう問題に対して、自館だけで問題を抱えて悩むのではなく、他館もまた同様の問題を抱えており、相互に相談や情報共有をすることが、その問題に対する最も有効な解決方法となります。多くの加盟館が、「どこにでも起こり得る問題」としてこの有害物質対策を理解したことで、今後の展示活動や、加盟館同士の連携に弾みが生まれることを期待しています。

広報委員・(公財)日本習字教育財団 観峰館 寺前公基

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