英国で作陶、情熱垣間見え 日登美美術館

リーチに同行 浜田庄司の希少な3点
 日登美美術館は、大阪のメンズファッションビジネスを営む日登美株式会社のオーナー、図師礼三・清子夫妻が、半世紀以上にわたり収集した美術品を私蔵に終わらせず、多くの人に見てもらいたいと願い、名刹永源寺近くの故郷、東近江市に1992年に開館した私設美術館です。

 総面積は600平方メートルと小振りながら展示室を大小三つに分け、大展示室は常設展示室として、英国の陶芸家、バーナード・リーチの作品を主体に、妻のジャネットをはじめ子供のデビット、孫のジョン、そして弟子にいたるまでの作品を展示しています。

 企画展は、小展示室で棟方志功、ジョアン・ミロなどの版画や絵画を、ドーム展示室では、中国などの古陶磁器や北大路魯山人らの作家陶磁器を、定期的にテーマを決めて展示替えをしています。

 美術館の外観は積み木遊びのように丸、三角、四角をうまく取り混ぜ、オレンジ色に塗った長方形を2階に突出させ、クリーム色で塗り分けたドームと三角形を並べた大屋根、というように風変りにデザインされています。

 収集のメインはもちろんバーナード・リーチの作品で約300点収蔵していますが、彼の生涯の友、浜田庄司の作品も30点所蔵しています。

 100年以上前の1920年、リーチが母国英国のセントアイブスに西洋で初めて、東洋風の登り窯を築こうと思い帰国しました。その築窯の手助けのため同行したのが、浜田庄司であり、わずか2、3年の滞在中に作陶した希少な作品3点が所蔵品の中に含まれています。当時英国では、陶芸を芸術として認める愛好者が少なく、二人をとても落胆させていました。まさに、英国の西の端セントアイブスで作られたものは、田舎の食器や土産物としてしか受け入られていなかったのです。しかし、この2、3年の間に二人は力を合わせ努力し2種類の作陶に成功しました。

 一つは英国の古い伝統陶芸のスリップウェアで、もう一つは、中国宋代風の炻器(せっき)(陶器と磁器の中間的な性質を持つ焼き物)でした。当時浜田庄司が制作した所蔵品3点のうち一つが、17世紀英国のスリップウェアの様式を施した彩色蓋付壺(ふたつきつぼ)です。その彩色はイッチン(細い口金道具)に化粧土や釉薬を入れ、素地の上に絞り出すようにして文様を自由に描いたものです。それは、筒描きとも言われる技法です。彼自身、西洋の文化を理解しつつ、その技術を巧みに使って成形された、本当に苦心惨憺(さんたん)の作品に思えます。他の2点は、中国と高麗の陶芸技術である画花(ヘラなどで陶磁器の表面に文様を彫りこむ技法)と象嵌(ぞうがん)(一つの素材に異なる素材を嵌め込む装飾技法)を使った青釉炻器です。本当に、中国と高麗の伝統的な作陶技術を見事に再現させた作品です。

 そしてこの3点は、父である図師礼三と共に40年以上前、英国ロンドンの数多くの骨董店を何年にもわたり探し歩き求めた作品です。無名の日本人が作った食器は、日常に使われ、ほとんどが散逸したと思われます。そう言った意味からとても希少な作品と言えます。

 当時、京都市立陶磁器研究所の若きスタッフだった浜田庄司本人も、後にリーチと共に世評が高まり、人間国宝に選定されるとは、夢にも思っていなかったことでしょう。ただ、異国の地で、大志を抱いて陶芸に打ち込んだ浜田庄司の情熱が、垣間見える作品です。どうぞ、ご鑑賞ください。

日登美美術館館長・岸本邦臣

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