細部まで再現、ミニチュア13基
大津祭曳山展示館は、大津市街並み博物館通り計画に基づき、1991(平成3)年にオープンしました。大津市の中心市街地である丸屋町商店街の中にあり、大津祭のPRとともに地域の活性化をめざして建設されました。平成18年4月からは特定非営利活動法人大津祭曳山連盟が指定管理を受け、施設の運営を行っています。
令和6年4月からは施設の入館が有料になり、大人(中学生以上)は150円、子供(小学生)は70円、小学生以下は無料で入館できます。
館内は1階・2階・3階とそれぞれの性格があります。1階は非常に精巧に作られた原寸大の曳山、西王母山(せいおうぼざん)模型を中心に、壁面には賑わう街並みを再現しています。曳山は模型とはいえ、長柄や車輪部分は200年ほど使用されていた神功皇后山の以前の物が使用されています。マルチ大スクリーンでは宵宮・本祭りの様子の映像を上映し、祭当日の迫力をご覧いただけます。また、本物の鉦や太鼓を演奏できるお囃子体験コーナーもあり、大津祭を体感できるゾーンとなっています。2階は2ヶ月ごとに各曳山の見送り幕や飾り金具の懸装品(けそうひん)を展示。全国でも一級品といわれる大津祭の文化財に出会えるゾーンです。3階には多目的ホールがあり、貸し館スペースとなっています。絵画教室や書道教室、またミニコンサートなどにも多く利用されています。
当館の逸品は、1938(昭和13)年に故中谷広次氏(当時15歳)が夏休みの宿題として製作した13基の曳山のミニチュアです。ご家族よりの寄託を受けて、2階の各曳山の実物懸装品展示の隣に展示してありますが、入館者の方の多くが、文化財である実物の懸装品よりも、当館の展示でいちばん感銘を受けたのはこの曳山のミニチュアだと仰います。みなさんが感心されるのは15歳という年令と、夏休みの宿題という限定された期間にこれだけのものを製作されたというところですが、大津祭の曳山をよく知る祭関係者から見るとこのミニチュアの本当のすごさは別のところにあります。それは、ひとつ一つの曳山の特徴を実に上手く捉えて作り込んであるところです。もちろん、縮尺でいえば30分の1ぐらいの大きさですからすべてを完全に再現することは困難ですが、それぞれの懸装品(とくに幕類)はもちろんのこと、からくり人形の衣装の色合いまで、一目見ればどの曳山のものかすぐわかるぐらい見事に再現されています。日本でのカラーフィルムの販売は昭和16年が最初で普及は戦後とあるので、おそらく中谷氏はひとつ一つ丹念にスケッチをしたうえで製作されたのでしょう。正に中谷氏の大津祭に対する愛情の深さとセンスの良さが光る逸品といえます。当館に来館の際はぜひこのミニチュアをご覧下さい。ただし、ほんものの文化財の方も忘れずに目を向けてくださいね。
※中谷氏はその後曳山のひとつである源氏山の囃子方として長年活躍されました。
大津祭曳山展示館