「おばあちゃん」は冬の風物詩 長浜市湖北野鳥センター

26年間連続渡来、山本山のオオワシ

 湖北野鳥センターは、長浜市の湖北地域の湖岸に設置されている野鳥を観察する施設です。館内には望遠鏡が設置されており、実際に外にいる野鳥を観察することができるほか、常駐するスタッフから野鳥や自然に関する解説を聞くこともできます。

 湖北地域では約330種の野鳥が確認されており、これは国内で記録された野鳥の半数以上にあたります。湖北野鳥センターからも、年間を通じて150種類以上の野鳥を観察することができます。一言に野鳥といっても四季折々のさまざまな種類がいますが、一年の中でも最も野鳥が多くなる時期が冬の季節です。ただ、冬の鳥はあまりにも種類が多く、一つ一つ紹介するのは難しいので、ここでは湖北野鳥センターでも最も人気のある「オオワシ」を紹介します。

 オオワシはくちばしから尾羽の先までの大きさが約1メートル、翼を広げた大きさが2・5メートルにもなる日本最大級のワシの仲間です。主に夏はカムチャツカ半島や樺太で繁殖し、冬になると越冬のために北海道に渡ってきます。湖北野鳥センターで見られるオオワシは特異的な個体で、本来の越冬地である北海道を飛び越して、単身で琵琶湖までやってくることで知られています。また、今シーズンを含めると26年間連続で渡来し続けており、メスであることと、山本山に普段とまっていることから、「山本山のおばあちゃん」の愛称で親しまれています。26年間にわたって野生の同じ個体を追い続けた記録は他になく、国内最高齢のオオワシとしても知られています。

 大きいワシと聞くと獰猛(どうもう)なイメージを持たれる方もいるかもしれません。しかし、このオオワシはそんなイメージとはかけ離れた生活をしています。主なエサは魚で、山の見晴らしが良い木にとまって琵琶湖を眺めて、獲物が見つかるとそれを捕まえて食べます。身体が大きすぎるが故に、どちらかというと狩りは苦手としており、生き物の死骸を食べたり、他のタカが捕まえた獲物を横取りしたりすることも少なくありません。また、茶色などの暗い色合いが多い猛禽類(もうきんるい)の中において、白と黒と黄色という美しい色合いを持つことから世界で最も美しいワシの一つとも呼ばれ、“獰猛”からはかけ離れたワシであることがわかります。

 このオオワシは例年2月末頃まで、琵琶湖に滞在します。寿命はわかっていない種類ではありますが、26年の歳月は鳥にとってけして短いものではありません。今後いつまでやってくるかわからない、山本山のオオワシを見に、湖北野鳥センターにぜひいらしてください。

長浜市湖北野鳥センター専門員・池田昇平
http://www.biwa.ne.jp/nio/

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