「ロレックスの名機」細部まで 近江神宮時計館宝物館

腕時計の全構成部品を樹脂に

 我が国の時刻制度は今をさかのぼること約1350年の昔、皇太子時代に大化の改新を行った中大兄皇子として知られる天智天皇の御代に、近江大津宮に漏刻(水時計)が設置され、時報を開始したことに始まります。天智天皇をご祭神とする近江神宮は、その近江大津宮跡に鎮座しており、時の祖神の神社として知られています。
 
 その由縁から近江神宮境内に1963年に時計歴史館が開館し、2010年にご鎮座70周年記念事業として改装。近江神宮時計館宝物館としてリニューアルオープンしました。

 館内には江戸時代に作られた和時計を中心に、スイス製、アメリカ製などの舶来時計、明治時代以降の国産時計や、宮家から贈られた時計など約100点が展示されています。また我が国時刻制度の創始と仰ぐ時の祖神、天智天皇に感謝の祈りをささげる漏刻祭に、国内外の時計メーカーより毎年献納された最新の機種の時計を展示しています。

  この中に、時計の全構成部品を見られるものとして、Cal.(キャリバー)1570ロレックス自動巻き腕時計の全構成部品(バンドを除く)を樹脂の中に閉じ込めた展示品があります。 

 ロレックス社は、1905年にドイツ人のハンス・ウィルスドルフがロンドンで創業したスイスの時計メーカーで、現在は腕時計を主力商品としています。

 創業の地はロンドンでしたが、当時のイギリスの時計関税(物品の輸出入に課せられる税)が高かったこともあり、徐々にスイスに拠点を移し、当時懐中時計が主流であった中、腕時計の利便性と将来性に注目したメーカーです。後には格段に高い防水性を誇る「オイスター(防水ケース)」を開発したオイスター社を買収することでその技術を得て、防水性の高い実用時計を開発し、世界の腕時計の使われ方に大きな影響を与えました。

 また、マニュファクチュール(時計の駆動装置から自社一貫製造する時計メーカーのこと)でもあり、各部品メーカーによる分業制が主流のスイスでは、全工程を1社で製造する、珍しい会社でもあります。

 そのような意味においても、企業秘密の塊である全部品を見られる機会はなかなか無いことであり、貴重な展示品と言えます。 
 機種名Cal.1570は、60年代半ばから80年代後半まで長期間製造された精度の高いムーブメント(時計の駆動装置)であり、「ロレックスの名機」と言われ、高い評価を得ています。ムーブメントは、自動巻き式、手巻き式両用です。館に所蔵されたのは、79年6月10日の漏刻祭(時の記念日)で、境内外拝殿階段下の左側にある龍の形をした古代火時計とともに、ロレックス社から奉納されました。

 展示品は、当館1階の時計展示室に入って左手の時計工房の向かいにあります。どうぞ皆さんにも腕時計全部品がどれくらい細かい部品で、いくつくらいの部品からできているかご覧いただき、ぜひご感想をお聞かせいただきたいと思います。

近江神宮権禰宜・山田督

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